25期 北アルプス剣岳山行記  その4

 

 八月四日 晴れ

  本日の食当小田氏、藤岡氏、岡村氏が寝過ごし五時三〇分起床。先生がすごい夢を

 見たといってはしゃぎまくった。この夢の内容は後輩に直伝することに決定した。今日も

 不可解なことに雲一つない快晴である。まさに「嵐の前の静けさ」である。朝からロックク

 ライミングの練習をすることになったが、その言葉を聞いたとたん、前岡氏は急に青白く

 なり、頭痛が起こり、熱は出なかったがバテ気味になり、テントで留守番をすることになっ

 た。前岡氏の病名は明らかではないが、医療係係長藤岡氏の話によると、対岩キョーフ

 症ということである。八時に、前岡氏を除く七人が、ザイル、ハーケン、ハンマー、ピッケル

 をもって出発した。一日に「滑落停止」の練習をした所より少し上の方の岩である。まず

 先生が先にルートを開いていく。そう難しくはないが、やはり、下を見ると目がくらむ。だい 

 たい四〇メートルくらいの高さでの練習である。(二階建て校舎でも高さ一〇メートルに満

 たない)「懸垂下降」で降りるとき、ザイルを掛けている肩が、摩擦熱で焼けそうになる。

 四時間ほど練習をして、ベースキャンプに戻った。前岡氏が「マカロニ」を茹で、「紅茶」を

 沸かしていてくれた。さすが「おかまの前岡」という異名をとるだけあって、よく気がつく。

 昼食後、また、台風の話である。山で台風を経験するか、それとも、台風を避けて下山す

 るか、なかなか決まらない。しかし、家族の心配などを考え明日下山することに決まった。

 それから第一に最初の計画である「黒部渓谷の廊下」へのコースは、水かさ、路面などか

 ら廃案となった。というと室堂へ戻るコースしかないが、剱御前から大日連峰を縦走して

 大日平、大日平から立山駅まで計十六時間のコースが考え出された。室堂へ帰るよりま

 しだというのでこれに決まりかけたが、これには二つの問題があった。一つは体力などの

 問題、特に菊地氏などが十六時間も耐えられるかどうか。もう一つは果たして天気が持つ

 かどうかである。以上の点から最終決定は明朝に持ち越された。さあ、忙しくなった。帰る

 となるとみんな必死だ。「このシャツほかす」「このパンツほかす」と荷物を少しでも軽くしよ

 うとする食料も目方の重い野菜はすべて使って日の持つものだけみんなに分配する。米

 も最小限に抑えた。この結果、夕食は言うまでもなく「ゴーカ」であった。ハンバーグにロー

 スハム、タマネギ、にんじん、ピーマン炒め煮「ビーフシチュー」「クリームシチュー」に「桃

 屋のはならっきょ」おまけにデザートとして水加減のまちごたポヨンポヨンのプリン、一人

 どんぶりに二杯くらいあった。メチャメチャ食って苦しかった。腹の皮が張ったので目の皮

 がたるんで眠くなった。

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